響きの発掘作業

退院してからあっという間に2ヶ月近く経ってしまいました。

手術を乗り越えた時というのはある種のアドレナリンを発しているのですね。無事に終えた安堵感とともに、えも言われぬ高揚や幸福をも感じていました。

大きな声では言えませんが、点滴の中に何か入っていたのでは?!とまで思いましたが、それは看護師の知り合いからしっかり否定されました。

耳が良くなったのかもしれない、演奏が少しよくなったのかもしれない、と感じていたのも退院後の診察で主治医の先生から「それは医学的には関係ありません。」とバッサリ言われ、笑ってしまいました。私の仕事柄、そういう感覚の中で生きている事は否定できないけどね、ともおっしゃってましたが。

たしかに。

そんなこんなの日々に以前と変わりなくバッハを弾いていてひらめいたのは、彫刻をしているような感じがする、と。

今の音から次の音への移り変わる案配で響きが変わります。答えは一つではなく、可能性がいくつもあります。その響を掘り出す作業が楽しいなと思います。

チェロ弾きとしては大変不謹慎ともいえますが、私は長い間バッハを弾きたい気持ちが分かりませんでした。チェロを始めたい人の動機で一番多いのがバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードなのに。

この冒頭の4小節など自分が弾くと台無しだし、とてもその先を続けるなんて、とまで思い悩んだ頃もありました。バッハに限らずですがそういった悩みを師匠にぶつけて、それを受け止めて頂いた時から変わって来ました。そしてその師匠の教えが「響きを作り出すこと」でした。もちろん私が理解するにはけっこう時間がかかりましたが。

そこに響きがあることが分かると、和声に意味が伴うようにもなりました。

アンサンブル・オーアで合奏しているときにもアイデアが湧いて来ます。今オーアで取り組んでいるのはまたもやバッハの無伴奏チェロ組曲第6番より「サラバンド」と「ガヴォット」のチェロ四重奏版。サラバンドは藤森亮一さんの編曲で、ガヴォットは不肖のわたくし編曲です。

先の7月に笠岡市で行われたチェロアンサンブルコンテストにこの2曲で出場しましたが、さらに来年の2月に、新鮮なアイデアで磨きをかけて「木越門下生+上田さとこチェロ教室おさらい会」で演奏を披露したいと思います。

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