top of page

遅い弓の効用

先日の日曜日はアンサンブル・オーアの合奏練習でした。

このアンサンブルは私の生徒さんだけでなく、他のお教室でレッスンを受けていらっしゃる方もたくさんおられます。なぜかというと、オーアは2015年5月の「1000人のチェロコンサートin仙台」に出演するため、福岡で練習会を重ねて来た仲間だったからです。

コンサートが終わっても、アンサンブルが楽しかった、まだ続けたいという声に応えて、私がリーダーとなってチェロアンサンブルグループとして発足し、さらに新しいメンバーも加わっています。

オーアは20名強のアンサンブルですが指揮者を置いていません。

本当は指揮があったほうが落ち着いて演奏できるとは思うのですが、出来るだけメンバーがそれぞれじぶんの耳のアンテナを使って、周りとのコンタクトを取りつつ演奏するようになっていきたいからです。だからグループの名前はオーアohr、ドイツ語の「耳」なのです。

さて、一口に耳を使う、音をよく聴くといっても、言うほど簡単ではありません。

最初に思う疑問は「聞こえているのに、なぜもっと聴けと言われるのだろう?」ということかもしれません。漢字にも「聞く」と「聴く」があるように、英語にも「hear」と「listen」があるように、音楽ではより積極的に能動的に聴く事が要求されます。

能動的に聴けたことを私たちは「耳が開いた」と言ったりします。

耳を開くためには体の状態が重要です。とにかくリラックスしていること。

頑張りすぎて硬くなって、一挙手一投足がコントロール出来ないと耳も当然閉じてしまいます。

だからロングトーンの練習はとても有効です。

このブログの初投稿で書いた「遅い弓」は、先日のオーアの練習でその効果が実証されて、みんなも実感しました。今練習しているのはバッハの無伴奏チェロ組曲第6番のサラバンド・チェロ四重奏版で、ニ長調の天国のような響きを目指していますが、奏者の耳が閉じていて音符の上っ面だけを追うような音だと、音程が合っていたとしても響き合いません。

弓で発音する瞬間は極端なまでに遅い弓で、音が鳴りだしたら弓を進めていいのです。

そうやって作った響きは、少ない弓なのに部屋中にハーモニーが溢れ、弾いている皆の顔を驚きに輝かせました。

最新記事
アーカイブ
bottom of page